日野の図書館

命名式
1965-09-13
市民集会所前
日野図書館所蔵
移動図書館の巡回
右端が前川初代館長
昭和40年代初頭
日野図書館所蔵

昭和40年(1965)9月21日、1台の移動図書館ひまわり号が市内を巡回し始めました。

初代館長は前川恒雄さんでした。前川さんは、建物の図書館をひとつ作ってそれでおしまいではなく、まず図書館がどういうものかを身をもって知ってもらうために、あえて移動図書館による市内全域への図書館サービスを選んだといいます。

「いつでも・どこでも・だれでも・なんでも」をモットーに、一人一人の市民を対象に本の直接貸出サービスを始めたのでした。

そのころの図書館といえば、学生や一部の限られた人たちのための施設というイメージが一般的でしたが、貸出を基本とした日野市立図書館の実践は知的好奇心をいだく多くの市民から受け入れられ、利用は野火のように広がりました。

私たちの図書館は希望にあふれた「市民の図書館」の理想として全国的にも注目されるモデル図書館となりました。

時を重ね、市内各地域に分館も拡充整備され、中央図書館と移動図書館と一体となった図書館網が整備され、サービスのいっそうの充実が図られています。

もうすぐ60周年を迎えようとしている日野市立図書館ですが、暮らしのなかで本当に役立つ市民のための図書館を目指して地道に歩みを続けています。

有山崧市長と前川恒雄初代館長

有山崧市長
1911-1969
前川恒雄初代館長
1930-2020

有山崧(たかし)市長は日野宿の旧家、有山家の出身で、東京帝国大学哲学科を卒業し、戦後、日本図書館協会の事務局長として、日本の図書館、特に公共図書館の発展に貢献されました。

日野市立図書館の初代館長の前川さんは、有山さんに見いだされ、石川県の七尾市立図書館から日本図書館協会職員に転職し、有山さんのもとで全国の青年図書館員とともに公共図書館の新たな姿を求めて奮闘していました。

6か月間のイギリスでの研修を終え、欧米とのあまりの格差に憂いを感じていたところに、有山さんの生家のある日野市で図書館を作る話が持ち上がり、前川さんは有山さんから指名されすべてを託されたのでした。前川さん34歳の時でした。

民主主義を育む上で図書館は欠かせない機関だという有山イズムを実践する挑戦の場として日野市が選ばれたのでした。

昭和40年(1965)6月に図書館設置条例が成立し、その2か月後には有山さんが日野市長に就任しますが、前川さんによれば、有山さんは図書館づくりに直接指示することなど一切なく、いつも後方で温かく見守ってくれていたそうです。

有山さんは日野市長として誠実に職務を遂行されていましたが、就任3年目に病をえて57歳という若さで永眠されました。

前川さんたちによる実践の確かな手応えをいっしょに感じていただけたのは幸いでしたが、有山さんの旅立ちは日本の公共図書館界にとって大きな痛手となりました。

「親父の話」有山至さんが、父・有山崧(たかし)さんを語る(第106弾)

歴代のひまわり号 初代から通算11台目まで

参考

  • 『移動図書館ひまわり号』 前川恒雄著 初版 筑摩書房 昭和63年(1988)4月/復刊 夏葉社 平成28年(2016)7月
  • 『本の力 図書館の力を信じて ―日野市立図書館開設五十周年記念誌―』日野市立図書館編集・発行 平成28年(2016)2月
  • 『移動図書館ひまわり号』(絵本) 広田美緒/絵 石嶋日出男/文 平成27年(2015)9月 
『移動図書館ひまわり号』(絵本)
広田美緒/絵 石嶋日出男/文
平成27年(2015)9月 

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