巷談・日野昔かるた(古谷梅雄氏作)
仲町の故古谷梅雄さん(通称「中の古谷:なかっぷる」)が『日野の歴史と文化』第13号(日野史談会 1979)で発表された「巷談・日野昔かるた」を転載させていただきます。ひとつひとつの句が日野宿(一部他の地域含む)の歴史や文化にまつわるとても興味深い作品です。
- い 和泉やの地酒に帝上機嫌 (注:「和泉や」は宇津木家の屋号)
- ろ 論外なお羽織衆の偉力なり
- は 反骨の意地が信蔵 彰義隊(注:「信蔵」は日野義順のこと)
- に 日本の銀座に角屋が焼く煉瓦 (注:「角屋」は下宿の髙木家屋号)
- ほ 宝泉寺持上げ観音量られる
- へ へぼ将棋王手(大手)は日野の万願寺
- と どぶろく(濁酒)で八丁田甫鼻唄で行く(注:「八丁田甫(はっちょうたんぼ)はかつてあった日野駅北西に広がる田んぼのこと)
- ち 秩父から出る雷は 音ばかり
- り 両端が鍵の手曲がり 街造り
- ぬ 濡れ手拭肩に玉の湯出る按摩
- る 瑠璃に映ゆお手植えの松 初日光 (注:「お手植えの松」は現矢の山公園にある昭和天皇が皇太子時代に植えられた松のこと)
- お 落合(落川)の鮎の釣場は油面
- わ わらべ唄鼬(いたち)が仲人 猫が嫁
- か 春日隊 若き頭領 彦五郎
- よ 嫁姑 毬栗(いがぐり)提げて 安産薬師
- た 大根は三々九度の飾物 (注:「大根」は東光寺大根のこと)
- れ 霊験は 焙炙(ほうろく)灸の安養寺
- そ 送迎は 加組の青年音楽隊(注:「加組」は森町、横町、金子橋、北原の4町内会による祭りの連合組織)
- つ 辻々の神に願掛け穴あき石
- ね 念仏講 十六日の廻り宿
- な 南畝翁 野羽織半天 川巡視 (注:「南畝(なんぽ)」は大田南畝、大田蜀山人のこと)
- ら らいらくな裸ご免の 半蔵爺
- む 村々に 東光寺連の馬鹿ばやし
- う 産神は荒き命よ 荒み輿
- の 野良着にて粉屋おどりの伊勢音頭
- く 競馬 源平島に 鬨の声(草競馬)
- や 矢地川の用水開く上名主(注:「上名主」は日野用水を開鑿した佐藤隼人のこと)
- ま 繭玉に花を咲かせる お蚕日待
- け 慶長に開きし街道 一里塚(注:「一里塚」は万願寺の一里塚のこと)
- ふ 文化 先づ 豊田に開く 山口ビール
- こ 護摩の火に不動の利剣魔を降す
- え 江戸へ行く鮎かつぎ唄いきなのど
- て 天領の三千石の日野総郷 (注:総郷=惣郷)
- あ 阿吽(あうん)にて守る国宝仁王門(注:「仁王門」は高幡不動尊の仁王門のこと)
- さ 作蔵翁 星の後継者 ときわ会 (注:「作蔵」は自由民権家の森久保作蔵のこと)
- き 狂歌師の絵馬屋四世 玉川居 (注:「玉川居」は狂歌師の玉川居祐翁のこと)
- ゆ 有福な町の産業、米、養蚕
- め 明治帝 日野の渡舟を馬車で渡御
- み 宮様は親分の背に 鮎の川
- し 死所を得て男 歳三 五稜郭
- ひ 日野橋の三角(みかど)三夫婦 渡り初め (注:「三角三夫婦」は滝瀬家の三世代のこと)
- も 百草園 鶯止る 翁の碑
- せ 仙八の味は 江戸まで鮎のすし (注:「仙八」は仙八ずしのこと)
- す 角力(すもう)膏 多摩の名灸 大昌寺